NPO法人との違い
以下の表は普通法人型一般社団法人とNPO法人との比較です。
一般社団法人の種類についてはこちらをご覧ください。
項目 | 一般社団法人 (普通法人型) | NPO法人 |
---|---|---|
設立に要する期間 | 2~3週間 | 3ヶ月半~4ヶ月 |
設立時に必要な社員 | 2人 | 10人 |
社員の入会規制 | 可 | 不可 |
必要な役員の数 | 理事1人 | 理事3人・監事1人 |
役員の親族規制 | 無し | 有り |
設立に必要な法定費用 | 112,000円 | 0円 |
所轄庁への報告義務 | 無し | 有り |
活動内容の制限 | 無し | 有り |
法人税 | 全所得に課税 | 収益事業に対して課税 |
法人住民税(均等割) | 有り | 収益事業を行わない場合の免除制度有り(要届出) |
登記に必要な登録免許税 | 必要 | 不要 |
一般社団法人とNPO法人の違いを聞かれることがよくあります。
これは、両法人とも非営利法人と言う位置付けであることが理由の一つに挙げられると思います。
最近ではNPO法人として既に活動していたにも関わらず、一般社団法人を設立して活動を移行させるようなケースも増えてきています。
この場合は一般社団法人を設立した後にNPO法人を解散させます。
以下、一般社団法人とNPO法人の違いを簡単に見ていきます。
定款に定める目的(事業)
法人は定款の目的に記載した項目のみを事業として行うことができます。
NPO法人の場合、この目的が20の分野に限られています。
例
- 保健・医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
これら20の分野に限定(特定)されているので、「特定非営利活動法人」と呼ばれていると考えると分かりやすいと思います。
これに対して一般社団法人には目的における制限はありません。
公序良俗に反するような当たり前のことを除き、どういう活動内容であっても一般社団法人の設立は可能です。
管轄の有無
ご存知の方も多いと思いますが、NPO法人は設立自体が「認証」という作業を経て行う必要があります。
福岡県の場合は
- 福岡県
- 福岡市
- 北九州市
というように認証窓口が設けられております。
設立後も一定の変更事項が生じた場合には届け出を要するなど、大げさに言えば「管理されている」と言えます。
これに対して一般社団法人は管轄などはなく、定款認証と設立登記を行えば設立することが可能です。
組織体系
一般社団法人とNPO法人はそれぞれ必要な役員の数が異なります。
法人種類 | 理事 | 監事 |
---|---|---|
一般社団法人 (普通法人型) | 1人 | 0人 |
一般社団法人 (非営利型) | 3人 | 0人※ |
NPO法人 | 3人 | 1人 |
※非営利型の場合、監事を置いた方がガバナンス上は良いとされております。
NPO法人の場合は例外なく理事が3人、監事が1人必要です。
一般社団法人はその種類によって必要な役員数が異なります。
また、NPO法人と一般社団法人の非営利型には役員の「親族制限」があります。
簡単に言うと3親等以内の親族を役員に置くことが出来ません。
このため、NPO法人を設立する場合に親族だけで役員を固めるようなことは出来ません。
一般社団法人においても非営利型の場合も同じです。
設立にかかる費用
NPO法人を設立する場合に必要な法定費用はゼロです。
法定費用とは定款の認証や設立登記をする際の登録免許税のことを指します。
NPO法人を設立する場合に必要な費用は法人印作成費用と役員の住民票取得費用位です。
これに対して一般社団法人の場合は定款認証に約52,000円、設立登記の際の登録免許税が60,000円必要です。
設立後
設立後もNPO法人は登録免許税が必要ありません。
つまり、役員を変更しようが本店住所を変えようが目的変更をしようが、その登記をする際の登録免許税はゼロです。
一般社団法人は株式会社や合同会社と同じように設立後も登録免許税が必要になります。
例えば
変更事項 | 登録免許税 |
---|---|
役員変更 | 10,000円 |
目的変更 | 30,000円 |
本店移転 (管轄内移転) | 30,000円 |
本店移転 (管轄外移転) | 60,000円 |
この点だけを見ると、NPO法人の方が法人の変更事項について費用が圧倒的に安く済みます。
とは言え、役員変更は途中で変更が無ければ2年に1回の登記ですし、目的変更や本店移転などはケースとして何度もあることでは無いと考えられます。
※
任期満了で役員が一度に3人変わる、若しくは変わらずに重任や再任する場合、登録免許税は10,000円です。
3人変わるから30,000円ではありません。
ただ、時期を分けて3人が変わる場合は30,000円となります。
つまり、一度に変更登記を行う場合は役員の数が何人であろうと10,000円で済みます。
毎年やること
NPO法人は毎年度ごとにやるべきことが沢山あります。
事業年度終了後、
- 資産の総額の変更登記
- 事業報告書等提出書
- 活動計算書
- 貸借対照表
- 財産目録
- 前事業年度の年間役員名簿
- 社員10人以上の名簿
- 最新の役員名簿
これら全てを管轄窓口に毎年提出する必要があります。
※
資産の総額の変更登記に関しては事業年度終了後、2ヶ月以内に法務局にて登記します。
これに加えて、どの法人格でも行う法人税の申告を行う必要があることは言うまでもありません。
一般社団法人については、上記箇条書きしたような作業は不要なため、他の法人格と同様に法人税申告書の提出を行えば良いです。
もちろん、役員の任期が切れるときなどは変更登記など最低限の作業は必要になります。
また、一般社団法人においても公開資料として
- 社員名簿
- 社員総会議事録
- 理事会議事録
- 事業報告書及び付属明細書
- その他
などを事務所に備え置く必要はあります。
しかし、これらの書類はどこかに提出するものではなく、法人の義務として備え置きを求められている物です。
株式会社等についても株主総会議事録や取締役会議事録、株主名簿などは同様に備え置く必要があるため、一般社団法人が特別な義務を課せられているという訳ではありません。
あくまでもNPO法人と比較をすると、事業年度後に行う作業としては一般社団法人の方が簡単であると言えます。
社員(正会員)の入会規制
これは他のページでも再三触れているため簡単に記載します。
NPO法人の場合、その法人の社員(正会員)になりたいと言う人がいれば入会させなければなりません。
基本的にNPO法人においては社員の入会に条件などを設けることが出来ません。
これに対し、全ての種類の一般社団法人(公益社団法人含む)は社員(正会員)の入会について、自由に条件を設定することが可能です。
税金の話
税制の考え方は非常に複雑であり、この場で全てを記載することは不可能です。
従って、ここでは概要及びお問合せが多い部分のみ記載します。
非営利法人といえども税金の課税はあります。
ただ、課税される部分が少し異なります。
NPO法人の場合は基本的に「収益事業にのみ」課税されます。
収益事業についてはこちらをご覧ください。
社員から徴収する会費や入会金など収益事業に該当しない部分については課税されません。
一般社団法人についてはその種類によって課税対象が変わります。
- 普通法人型の場合
全所得に課税 - 非営利型法人の場合
収益事業の部分に課税
となります。
よって、NPO法人と非営利型一般社団法人は殆ど変らない取扱いがなされていると言えます。
普通法人型の一般社団法人の場合は会費や入会金、寄付金に至るまで株式会社等と同様に全てが課税対象とされています。
※
NPO法人で収益事業を全く行わない場合、法人住民税の均等割りが免除になります(要申請)。
しかし、一般社団法人については全く収益事業を行わない場合でも減免措置はありません(福岡県の場合)。
よって、この部分のみで考えると収益事業を全く行わない場合はNPO法人を設立した方が運営費は安く済むと言えます。
ただし、この減免措置については都道府県により扱いが異なります。
NPO法人で収益事業を行っていたとしても設立から一定期間の間は赤字の場合のみ減免措置を認める自治体もあるなど対応は様々です。
福岡県においては収益事業を行わないNPO法人に対しての減免措置は取られていますが、制度の改正などによりいつのまにか中身が変わってたりもします。
十分にお気を付け下さい。
法人が寄付を受けた場合
非営利型の一般社団法人及びNPO法人はともに非課税となります。
しかし、寄付した者に対して特定の利益を供与した場合は当然に課税されます。
特定の利益を供与、という点は非常に曖昧な表現なのですが。。。
例えば、NPO法人や一般社団法人に対して寄付をした人や法人があったとします。
寄付をしてもらった代わりに、寄付を受け取った一般社団法人やNPO法人が運営・管理するウェブサイトに寄付者の広告(バナーなど)を掲載したとします。
これは特定の利益を供与したとみなされるため課税対象になる可能性があります。
寄付については、寄付された「物」によっても取扱いが様々であり一概に説明することが出来ません。
寄付が課税されないからといって会計上に何も記載しないでよい訳でもありません。
寄付物が不動産などの場合は時価で算出するなど色々な決まりごとがあります。
また、金額(100万円以上)によっては必ず届け出を要するなどのケースもあります。
ご自分のみで判断せずに迷った時点で税務署に御相談下さい。
注意点
上記したように税制については非常に細かい規定がたくさんあり、分かり難い点も多くあります。
税務の専門家は税理士さんや会計士さんですが、非営利法人の税務会計について詳しい人もいればそうでない人もいます。
従って、法人の運営上、税制面での疑問が生じたら迷わず税務署に相談しに行くことをお勧めします。
自分では課税されないと思っていても、実際は課税要件に該当し、後に追徴課税と言う事にでもなれば最悪です。
非営利法人について専門の税理士さんや会計士さんを顧問につけない場合は、税務署を頼るなどして十分にお気を付け頂ければと思います。
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